2010年3月31日水曜日

珈琲休憩 overdose

白砂糖ほど危ないものはない。あれは最も垣根の低い麻薬だ。

亡くなった父は、そんなことを息子の私につぶやきながら、
自分は猪口を口元に運び、ご満悦でした。
たしかに父の言葉には一理あります。
まず、彼の父、私の祖父は和菓子職人で、
その世界において「甘味は柿をもって最上とする」からです。
日本の製糖は、琉球・奄美・薩摩などをのぞけば、
江戸時代の中期から奨励され、
阿波と讃岐の特産品である「和三盆」もその頃から始まります。
ところが、御維新の文明開化につれて、
舶来の白砂糖に駆逐されてしまうのです。
その歴史を忘れたくないという想いが、父の心の片隅にあったのでしょう。





甘すぎず、上品な和三盆









それに加えて、白砂糖の甘味は、
酒や珈琲と違って幼児から年寄りまでを虜にしますし、
白砂糖は虫歯や糖尿病などを誘発する物質に数えられています。
また、白砂糖断ちをすると、禁断症状が襲うケースもあるらしい。
そもそも白砂糖は、脳内麻薬であるβ-エンドルフィンの分泌を促すもの。
β-エンドルフィンはモルヒネに比べて約6.5倍の鎮痛作用を持ち、
性行為でも分泌され、多幸感に誘うそうです。
ランナーズ・ハイもβ-エンドルフィンによるものではないか、
といわれています。
特に脳内の報酬系に分布するというから、
「頑張ったわたしに、ごほうびのスイーツ」や
「おつかれさまの缶コーヒー」は、
あながち広告コピーの方便とは言いきれません。

缶コーヒーは、日本で独自に発達した飲料ですが、
(世界に先駆けていたという説もある)
私はあてずっぽうに、
大正時代の駅弁販売で扱ったことに始まるコーヒー牛乳が、
大きく影響しているのではないかと勘ぐっています。



コーヒー牛乳の元祖は守山乳業
今も健在で、1リットル・パックの
「オーガニック珈琲」は旨い。








Let's Have a Coffee Break.


最近、レトロ雑貨の「かんぢや」で買った珈琲カップ&ソーサー。昭和40年代のノリタケです。ちょっといい感じでしょ?まだ、数セット在庫があるようなので、気になる方は、上記のリンクからどうぞ。

2010年3月30日火曜日

珈琲休憩 砂糖は入れますか?


今秋、たばこ増税が実施される見通しです。日本では事実上、JT(日本たばこ産業)の国内独占製造が続いていますが、これにより、海外に比べれは安く消費者は買うことができます。さらに、日本市場では密造したり、横流ししても割に合わないとされ、ヨーロッパのように数百億円もの脱税に至る非合法組織は、手を出しにくいといわれてきました。ただし今後、タバコの価格が海外なみに上がってくると、闇たばこも採算が取れるようになるでしょう。

タバコはナス科の1年草で、もともとは南米のアンデス山中の野生種から派生したといわれています。タバコの文化が世界中に広がるきっかけとなったのは、いわゆるヨーロッパ人の大航海時代、コロンブスやヴァスコ・ダ・ガマが甲板で望遠鏡をのぞいていた15世紀の末。ヨーロッパ人がアメリカ大陸に到達し、2大陸の文明が衝突しました。このとき、タバコは世界商品として一歩踏み出すことになったのです。日本はちょうど応仁の乱のさなか、戦国時代の前期で、室町幕府の将軍、足利義政が銀閣寺を創建する頃にあたります。




アルフレッド・ヘンリー・ダンヒルが上梓した喫煙具の解説書、
“The Gentle Art of Smoking”(1954,1976)
日本語版は『たばこ紳士』(1961年)で、
音楽家の團伊玖麿が翻訳している。
(ピノキオブックスでも取扱中)


いっぽうタバコの良きパートナーでもある珈琲は、8世紀頃までにエチオピアからアラビア半島に伝わり、中東・イスラム世界では薬用ないし秘義の覚醒飲料として広がっていきます。ちなみに、アメリカ大陸でのタバコも、初めは薬用と儀礼用です。珈琲が飲み物として普及するのは15世紀くらい。ちょうど大航海時代の頃に、メッカやメディナといったイスラム教の聖地、都市で、盛んに飲まれるようになりました。当然、地続きのヨーロッパにもとうに伝わっていましたが、王侯貴族や聖職者などの上流階級で秘かにたしなまれていたようです。

12世紀にもなると、砂糖を入れて飲む習慣がヨーロッパで定着してきます。すでに11世紀には、十字軍の遠征によって東方よりヨーロッパにもたらされていた砂糖。ただし、まだまだミネラルを含んだ黒砂糖の時代です。精製された白砂糖は、元の皇帝フビライ・ハン(忽必烈)が、アラビア人の技術者に命じて作らせたといわれています。この頃、元の大都を訪れたヴェネツィア商人マルコ・ポーロは、初めて見た白砂糖に驚きを隠せません。かの有名な『東方見聞録』にも記したほど。

Marco Polo, La Description du Monde

ヨーロッパにタバコをもたらしたアメリカ大陸はまた、砂糖のプランテーションにも適した土地でした。それは同時に、ヨーロッパ人が圧倒した先住民や、アフリカ大陸から連れてきた黒人にとって過酷な労働を強いることでもありました。そのような経緯をとてもわかりやすく解説しているのが川北稔『砂糖の歴史』です。この本は岩波ジュニア新書シリーズの一冊ですが、格上の岩波新書に入れても遜色ない内容を持っています。


岩波ジュニア新書は、中高生向けのシリーズながら、実は隠れた良書の宝庫。各界の第一人者や大家、巨匠たちが、たんなる入門書や手引に終わらせることなく、誠意と熱意をもって次世代に「魂のバトン」を渡そうとしています。今年の6月21日に満30歳を迎える岩波ジュニア新書、いつか稿を改めて特集してみたいシリーズです。


『砂糖の歴史』の古本が、ピノキオブックスに入荷。商品ページはこちらです。







Let's Have a Coffee Break.

「コーヒーもう一杯」のとき
うっかり紹介しそびれたボブ・ディランの名盤『DESIRE』。
おすすめの曲はもちろん「One More Cup of Coffee」です。

















みうらじゅんマガジン vol.01 (ボブ・ディラン特集号)


2010年3月24日水曜日

珈琲休憩 灰皿をください

講談社の「月刊アフタヌーン」に、
豊田徹也が『珈琲時間』を連載を始めたのは、2008年の夏。
それをさかのぼること3年前の春、
日本で公開されたのが『コーヒー&シガレッツ』です。
監督はジム・ジャームッシュ。
1980年代の半ばに、多感な時期を過ごした人にとっては、
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のモノクロ画面が
よみがえってくることでしょう。



『コーヒー&シガレッツ』もまた全編モノクロで、
11話の別個のエピソードが並ぶオムニバス。
それぞれのつながりは明らかではありませんが、
いずれも珈琲ないし紅茶と紫煙、
そして会話が画面を満たします。
言ってみれば、ジャームッシュにとっての珈琲は、
映画を撮るための口実です。その逆ではありません。
たとえば最新の映像技術を試すために映画を撮るのではなく、
あるいは政治思想を訴えるために映画を撮るのでもなく、
ただただ制作準備と撮影現場と映画館が好きなだけでしょう。




『ジム・ジャームッシュ インタビューズ』
(東邦出版、2006年)











そういえば、ちょうど今、
東京のワタリウム美術館で、
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に主演した
ジョン・ルーリーのドローイング展が開催されています。
本職はミュージシャンなんですが、
心をひきつけるような絵を描く人です。



1月30日から5月16日までのロングラン。
興味のある方はぜひ。概要はこちら。








Let's Have a Coffee Break.


「ジャニー・ギター」は
『大砂塵』の挿入歌。
「皆殺しの歌」は、
『リオ・ブラボー』の挿入歌。
いずれも西部劇。
スターリング・ヘイドンの
「男には珈琲と煙草があればいい」
という名台詞や、
珈琲カップを片手に、
仲間のセッションを見つめる
ジョン・ウェインが良かった。

2010年3月21日日曜日

珈琲休憩 四杯め

前回とりあげた豊田徹也の『珈琲時間』。
私が特に惹かれてしまったのは
中身のマンガよりも表紙、カバーイラスト。
大好きな吉野朔実に、タッチがちょっと似ているのです。
それもどちらかというとマンガではなく、
本や映画のレビューに添えるイラストのほう。
いうなれば、「ぶ〜け」をはずしたときの吉野朔実。

左は読書エッセイ『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』の表紙、
右は映画鑑賞エッセイ『こんな映画が、』より抜粋。
興味をひかれた方は、ピノキオブックスには在庫がないので、
どうぞ新刊屋さんでお求めください。

吉野朔実にはいくつも傑作長編があり、
私も、ヒロインがアーティストによっていっとき心が救われる、
『ジュリエットの卵』が好きだったりしますが、
本当は短編がいちばん冴える作家、そんな気がします。
短編集『いたいけな瞳』をはじめ、
連作短編めいた『恋愛的瞬間』など、
より多くの人に読んでほしいシリーズがありますが、
正面から珈琲や喫茶を扱ったものはありません。
ただ、私が吉野朔実と珈琲で思い出すのが、
大好きなこのシーンです。


これは短編『天使の声』の一コマで、
ここだけ見るとコントみたいですし、
実際、吉野朔実らしいユーモア、
ミニシアターや名画座で上映される外国映画的なユーモアは、
いくつもちりばめられているのですが、
(たとえば「カセットテープの友釣り」とか)
基本的には身近な人の死を扱ったシリアスな作品です。
つまり「喪の仕事」がテーマで、
左耳が聴こえなくなった御曹司、
声が出なくなったオペラ歌手、
そして、彼氏につれなくされた女子高生が主要キャスト。
この女子高生が「水っぽいミルクで珈琲を飲みたくない」と
主張するので、上のようなシーンが生まれたわけです。
ブラック党の私にとっては、理解不能なこだわりなんですが、
この女の子のキャラクターをあらわす良いエピソードでした。

Let's Have a Caffee Break.
クール&ソフトボイスで知られたペギー・リーの名盤『ブラック・コーヒー』

2010年3月20日土曜日

珈琲休憩 もう一杯

数年前『ジョゼと虎と魚たち』などで知られる犬堂一心が監督し、
アイドルグループの嵐の5人、大野智、櫻井翔、相葉雅紀、
二宮和也、松本潤がせいぞろいした映画『黄色い涙』。
あれの原作者が永島慎二でした。

永島慎二のDNAを持った現役マンガ家は何人もいますが、
その中の一人に山川直人がいます。
三上博史が主演した『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』や
大友克洋の短編マンガを原作にした『SO WHAT』などの映画監督とは、
同姓同名です。
これが山川直人が初めて出した単行本『あかい他人』。
20年くらい前の本で、もうボロボロになっています…
以来、ノスタルジックでセンチメンタルな作風が好きで、
(とはいえ、ときどきゾクッとするような冷たさもある)
本にまとめたものは全部買っているのですが、
彼の代表的なシリーズが『コーヒーもう一杯』。
珈琲や喫茶店を大道具や小道具、口実にした短編の連作です。
エンターブレインから出ていますが、
この出版社は今年、さっきふれた『あかい他人』を復刊するようです。

『コーヒーもう一杯』と同じように珈琲くくりで仕上げたのが
豊田徹也の短編集『珈琲時間』です。

評価の高かった前作『アンダーカレント』の刊行から4年、
去年の暮れに単行本にまとめられ、少し話題になっていました。
なかでも、チェロ弾きの女の子と、ちょっと若いころのゴダールに似た、
うさくさいイタリア人映画監督がコメディーを演じる連作が面白く、
独立させて続きを描いてほしいと思います。
少女と大型犬みたいに、スリムな女の子とチェロは、
きっとポテンシャルがあるコンビのはずです。
特にチェロのケース。
機関銃でも花束でも、幼児でも入りそうじゃないですか。
そこに、うさんくさいイタリア人となれば、物語はおのずと動くはず。

『珈琲時間』は、講談社のアフタヌーンKCですが、
このブランドには、ナスをお題にした黒田硫黄の傑作短編集、
その名もそっけない『茄子』があります。
去年、新装版が出ました。



実は、この「珈琲休憩」は、
豊田徹也の『珈琲時間』を紹介するために書き始めたものですが、
ようやく3回目にして目的を果たすことができました。
でも、まだまだ続きます。

Let's Have a Coffee Break.

2010年3月18日木曜日

珈琲休憩 おかわり

1970年代の後半から、喫茶店文学が台頭する。
そんなことが言われたことがあります。
ちょうど村上春樹がデビューした頃でしょうか。
春樹自身、千駄ケ谷で実際にジャズ喫茶を営んでいた人です。

それまで、作家といえば「文壇バー」という言葉や、
林忠夫が撮った太宰治の写真に象徴されるように、
酒場に集まっていました。
とりわけ、戦前生まれの作家たちは、戦後になると、領収書をもらうことを覚えたサラリーマン編集者とつるんで夜な夜な銀座のバーに出入りするイメージが強くありますし、そもそも芥川賞と直木賞の審査会場は今でも料亭ですから、文壇から夜や酒のイメージは拭いきれません。
また、戦後生まれの作家たちにも、団塊の世代までは、新宿のゴールデン街あたりで飲み明かすイメージがあり、やはり酒場と近しい。まだマッチョ優勢です。その点、麻布台のイタリア料理店キャンティは、ジャンルを超えて文化人や芸能人、クリエイターなどが集まるサロンとして、ちょっと異質なスポットだったのでしょう。

それが、全共闘の「まつり」に遅れてしまった世代というか、間に合わなくて良かったと思っている世代くらいから、日本酒や焼酎、ウイスキーの匂いがしなくなり、かわってビールや珈琲、タバコの匂いがたちこめてきます。村上龍の場合は別の匂いも漂っていましたが、それはまた別の機会に。

かつて私が目にした「酒場から喫茶店へ」という説は、
たんなる印象論で、実証も乏しいものでした。
しかしながら、戯言と切って捨てるには惜しい何かがありました。
誰か新しい書き手が受け継いで、一冊著してほしいと思います。

いっぽうマンガの場合、
長らく少年少女マンガが主流だったので、
喫茶店が登場しにくい事情もありましたし、
「漫画家は喫茶店にも酒場にも行かず、仕事場にいる」
というイメージが、手塚治虫を筆頭にありました。
そこには若いマンガ家およびマンガ家未満がたむろした梁山泊、
トキワ荘などのイメージも重なっています。
つまり「アパート」ですね。
そのトキワ荘から手塚治虫の虫プロに入り、
マニアックな青年誌「COM」や「ガロ」で
作品を発表していたマンガ家に、永島慎二がいます。
彼の出世作は1961年に発表した『漫画家残酷物語』。



左が朝日ソノラマ版。右が復刻された、ふゅーじょんぷろだくと版。











このマンガは(売れない)漫画家の私生活を描いた作品で、
喫茶店が欠かせない舞台装置になっていました。
おそらく「パリの貧乏青年画家」の物語に
親近感を持っていたのでしょう。
ただ、喫茶店に行くことは行くのですが、
主人公たちはウイスキーを飲んでいます。
時代まだ昭和30年代、
東京オリンピックの前のことですから、
いたし方のないところでしょう。
CMでいえば、違いのわかるネスカフェよりも前、
柳原良平が描いたアンクルトリスが人気の時代でした。




広島県尾道市浦崎町境ガ浜に
「アンクル船長の館」 という
柳原良平のミュージアムが
あったのですが、
残念ながら昨年の秋、
閉館してしまったようです。

珈琲休憩

珈琲、それは、
悪魔のように黒く、地獄のように熱く、
天使のように清らかで、恋のように甘い。

この有名なアフォリズムは、フランスの政治家タレーランこと、
シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール伯爵の言葉です。
翻訳者によって、引用されるメディアによって、
様々なバリエーションがあります。
私がこの言葉を知ったのは中学生のころ。
引用していたのはインスタントコーヒーのCMでした。
ところが、私はずっと長い間、
フランスの文豪、バルザックの言葉だと思い込んでいたのです。
バルザックはタレーランより半世紀近く後に生まれた作家ですが、
真夜中、珈琲をがぶ飲みして原稿を書いていたことでも知られています。
だから…というわけでもないのでしょうが、不思議な勘違いですね。

ちなみに、バルザックについては、
こちらのブログが参考になります。
『人物再登場がおもしろいバルザック』

さて、世紀を超えて語り継がれるタレーランの言葉。
とても文学的な詩情あふれる表現ですが、
ヨーロッパ上流階級の社交辞令は、
本邦中世における平安貴族の短歌みたいなもの(?)
名門貴族の出身であるタレーランにしてみれば、
ごく自然に身に付いた教養の発露だったのでしょう。
実際は、裏切りと機略の政治家で、稀代の天才外交官、
一筋縄ではいかない人物でした。


 タレーランの人生は波乱万丈。
関わる人物もローマ教皇ピウス6世をはじめ、
ナポレオン、メッテルニヒなど大看板ぞろい、
とても興味深い生涯を送った人です。
主な伝記のなかでは、第78代総理大臣・宮沢喜一の弟・泰が訳した
ジャン・オリユー『タレラン伝』がベストですが、
これは大著で高価。少し覚悟が必要かもしれません。
そうなると、文庫で手軽に読めるダフ・クーパー『タレイラン評伝』
と思ったら、いつのまにか品切れでプレミアムが付いていますね。
特に下巻。
そのうちきっと、
ピノキオブックスで手頃な価格で出るでしょう(?)。
書庫にはありますが、まだ「売れない本」なのです。
【追記】3月24日、入荷しました。詳細はこちら。

Let's Have a Coffee Break.

2010年3月11日木曜日

葦の髄から

「葦の髄から天井をのぞく」というのは、
「井の中の蛙」と同じような意味のことわざ。
よくへりくだった業界紙のデスクが、
社説のタイトルにします。

ところで、この記事の右下に、
妙なウィジェットが置かれているのにお気づきでしたか?
これはインターネットの百科事典、
Wikipediaの検索窓で、
なんと、検索結果もブログと同じページで見られます。
ですから、説明不足の固有名詞が出てきても、
リアル事典を脇に置いてるような気軽さで、
言葉を引くことができるわけです。
ブログの書き手としても、逐一説明したり、
リンクを張ったりしなくてもいいので、
手間を省くことができます。
※不具合が発生したので削除しました[2010.05.24]

いろいろな問題をはらみながらも、Wikipediaは、
ネットで文章を読んだり書いたりするのに欠かせません。
そんなWikiiの沿革について書かれた本が昨年の夏、翻訳されました。
アンドリュー・リー著『ウィキペディア・レボリューション』です。
昨日、ピノキオブックスの商品にラインアップされましたので、
ご関心のある方はどうぞ。

2010年3月4日木曜日

銀輪手帖

きのうは3月3日のひなまつり。
東京都内は、天気予報によれば、
今週最後の「一日じゅう晴れの日」らしい。
そこで、サイクリングをすることにしました。

目的地は渋谷区の神宮前2丁目。
原宿の東のはしっこです。
Googleマップのルート検索では、
およそ10kmの道のり。
実際は、渋谷周辺に坂が多いので、
体感12kmくらいでしょうか。
大ざっぱに言うと、
青山経由と代々木経由、
2つのルートがありますが、
私は走って気持ちがいい代々木ルートを選び、
自分なりにアレンジしました。

目的地がカフェレストラン&バーのMOKUBAZAなので、
正午に出発しても途中でランチは食べられません。
なにしろ美味しいキーマカレーが待っているのです。
とはいえ、目的はランチではなく、
MOKUBAZAのバータイム担当のMさんに、
ロシア製の中望遠レンズ「ジュピター9/85mm F2」をお届けするためでした。
 
もちろん、ピノキオブックスでは、
カメラやレンズの販売はやってません。
以前、下手の横好きでカメラをいじっていた頃に、
買ってはみたものの放置してあったレンズを
最近、写真撮影にハマったMさんに
お貸しすることになったのです。

Mさんのカメラはペンタックスのデジタル一眼レフ。
なので、ゼラチンシルバー(フィルム用)の
旧式レンズも現役で使えます。

MOKUBAZAに到着したのは午後2時ころ。
ランチタイムは午後3時までですが、
この1時間だけタバコが吸えます(笑)。
いつのまにか固く誓った禁煙が
解禁煙になっていて、情けないかぎり…
サイクリングの最中も、
激しい動悸や息切れが襲っていました。

サイクリングといえば、
フランク・パターソン Frank Pattersonという
イギリスの画家をごぞんじですか?
19世紀末から20世紀の中ごろまで、
イギリスじゅうを自転車で旅行して、
4千点にもおよぶスケッチを遺した人です。
その多くは当時のサイクリング専門誌に掲載され、
人や風土の生き生きとした描写が、人気を博しました。

 
 













現在、作品集は入手困難で、
日本では「New Cycling」という専門誌のサイトで
限定発売されています。サイトはこちら→














2冊セットで18,500円と、気軽に買える価格ではありませんが、
古本の市場やオークションにも滅多に出ない状況です。
みなさん大切に所蔵しているのでしょう。
かくいう私も、今のところピノキオブックスに出せません。
つまり「売れない本」です。
ただ、本国イギリスには公式サイトがあって、
そこでも作品集やプリント(原画の複製)を販売しています。
ざっと読むと、ワールドワイド対応らしいので、
日本にも届けてくれるみたいです。

パターソンが100年遅く生まれていたら、
スケッチではなくスナップだったのかしもれません。

下の写真は「Sightsong」というブログの方が撮ったスナップです。

 











引用元のブログはこちら、Sightsong『写真の元祖』

2010年3月3日水曜日

プロフィール写真について

 
プロフィールで使っている写真は、フランスの自動車メーカー、
シトロエン社のマスコット人形です。
海外のおもちゃを取り扱っているオンラインショップ、
zauberさんで購入しました。
(ご厚意で商品写真をそのまま使わせていただいてます)

zauberは、英語読みだと「ザウバー」、
ドイツ語読みだと「ツァウバー」になるのかな?
F1のレーシングチームにありましたね、ザウバー。
もともとはスイスのプライベーターでしたが、
BMWが傘下におさめてワークスになりました。

この単語の意味は、
「神のご加護」とか「奇跡」、あるいは「魔法」や「呪文」らしい。
たぶん「魔法」でしょうね、このショップの場合。
でも、正しい読み方は知らないんです。
メールだけのやりとりだったので。

この、ほんわかとしたフィギュアを見ていると、
ドイツの画家ミヒャエル・ゾーヴァさんを思い出します。
アクセル・ハッケの『ちいさなちいさな王様』や
エヴァ・へラーの『思いがけない贈り物』など、
寓話的世界の挿絵で有名です。
そういえば、映画『アメリ』で主人公の部屋にあった動物の絵、
あれもゾーヴァの作品でした。
もっとも、ゾーヴァのつづりはSovaで、ザウバーとは関係ありませんが、
日本人が口にすると、なんか似てきてしまう。

ちなみに、『ちいさなちいさな王様』は、
ピノキオブックスで販売中です。
商品詳細ページはこちら。

シトロエンといえば、
『ルパン三世 カリオストロの城』を思い出す人も多いかもしれません。
映画冒頭のカーチェイスで、クラリス姫が乗っていたクルマです。
ていうか、監督した宮崎駿の愛車でした。いわゆる2馬力。












また、『カリオストロ』の2年後に公開された
『007 ユア・アイズ・オンリー』でも2CVが登場、
準ボンドカー扱いで、けっこうおいしいシーンを持っていきました。
でも、やっぱり、シトロエンと言えば、
20世紀を代表する名車のひとつ、DSです。



フランスでは公用車に採用されるなど、けっこうポピュラーなクルマでした。
ただ、当時の先進技術ハイドロニューマチックのせいか、故障が多く、
1960年代のフランス映画にもよく登場しましたが、
何かが起こりそうな気配をいつも漂わせていました。
ジャン=リュック・ゴダールじゃないけれど、
故障がちのシトロエンDSが1台あれば、映画は撮れるかもしれません。

2010年3月1日月曜日

初めまして、始めました。

カナダ・バンクーバーで開催している冬季オリンピックは本日が最終日、
そして身の回りでは、公園の梅が散って、庭の桜を待つ季節となりました。

三月といえば卒業式。
にもかかわらず、ブログ・デビューを果たす私は、
入学式を迎えたような気分です。

ピノキオブックスという、オンライン古書店を営む私が、
ブログのタイトルに『売れない本や』と付けるのは、
「いくらなんでも、あんまりだ」と言われました。
たしかに、ちょっと自虐的です。
でも、もう少し手元に置いておきたいから、まだ売れない本や、
手に入れていないから、売りたくても売れない本や、
その他いろいろなことについて書いていこうと思っています。
それで、こんなタイトルになりました。