2010年3月30日火曜日

珈琲休憩 砂糖は入れますか?


今秋、たばこ増税が実施される見通しです。日本では事実上、JT(日本たばこ産業)の国内独占製造が続いていますが、これにより、海外に比べれは安く消費者は買うことができます。さらに、日本市場では密造したり、横流ししても割に合わないとされ、ヨーロッパのように数百億円もの脱税に至る非合法組織は、手を出しにくいといわれてきました。ただし今後、タバコの価格が海外なみに上がってくると、闇たばこも採算が取れるようになるでしょう。

タバコはナス科の1年草で、もともとは南米のアンデス山中の野生種から派生したといわれています。タバコの文化が世界中に広がるきっかけとなったのは、いわゆるヨーロッパ人の大航海時代、コロンブスやヴァスコ・ダ・ガマが甲板で望遠鏡をのぞいていた15世紀の末。ヨーロッパ人がアメリカ大陸に到達し、2大陸の文明が衝突しました。このとき、タバコは世界商品として一歩踏み出すことになったのです。日本はちょうど応仁の乱のさなか、戦国時代の前期で、室町幕府の将軍、足利義政が銀閣寺を創建する頃にあたります。




アルフレッド・ヘンリー・ダンヒルが上梓した喫煙具の解説書、
“The Gentle Art of Smoking”(1954,1976)
日本語版は『たばこ紳士』(1961年)で、
音楽家の團伊玖麿が翻訳している。
(ピノキオブックスでも取扱中)


いっぽうタバコの良きパートナーでもある珈琲は、8世紀頃までにエチオピアからアラビア半島に伝わり、中東・イスラム世界では薬用ないし秘義の覚醒飲料として広がっていきます。ちなみに、アメリカ大陸でのタバコも、初めは薬用と儀礼用です。珈琲が飲み物として普及するのは15世紀くらい。ちょうど大航海時代の頃に、メッカやメディナといったイスラム教の聖地、都市で、盛んに飲まれるようになりました。当然、地続きのヨーロッパにもとうに伝わっていましたが、王侯貴族や聖職者などの上流階級で秘かにたしなまれていたようです。

12世紀にもなると、砂糖を入れて飲む習慣がヨーロッパで定着してきます。すでに11世紀には、十字軍の遠征によって東方よりヨーロッパにもたらされていた砂糖。ただし、まだまだミネラルを含んだ黒砂糖の時代です。精製された白砂糖は、元の皇帝フビライ・ハン(忽必烈)が、アラビア人の技術者に命じて作らせたといわれています。この頃、元の大都を訪れたヴェネツィア商人マルコ・ポーロは、初めて見た白砂糖に驚きを隠せません。かの有名な『東方見聞録』にも記したほど。

Marco Polo, La Description du Monde

ヨーロッパにタバコをもたらしたアメリカ大陸はまた、砂糖のプランテーションにも適した土地でした。それは同時に、ヨーロッパ人が圧倒した先住民や、アフリカ大陸から連れてきた黒人にとって過酷な労働を強いることでもありました。そのような経緯をとてもわかりやすく解説しているのが川北稔『砂糖の歴史』です。この本は岩波ジュニア新書シリーズの一冊ですが、格上の岩波新書に入れても遜色ない内容を持っています。


岩波ジュニア新書は、中高生向けのシリーズながら、実は隠れた良書の宝庫。各界の第一人者や大家、巨匠たちが、たんなる入門書や手引に終わらせることなく、誠意と熱意をもって次世代に「魂のバトン」を渡そうとしています。今年の6月21日に満30歳を迎える岩波ジュニア新書、いつか稿を改めて特集してみたいシリーズです。


『砂糖の歴史』の古本が、ピノキオブックスに入荷。商品ページはこちらです。







Let's Have a Coffee Break.

「コーヒーもう一杯」のとき
うっかり紹介しそびれたボブ・ディランの名盤『DESIRE』。
おすすめの曲はもちろん「One More Cup of Coffee」です。

















みうらじゅんマガジン vol.01 (ボブ・ディラン特集号)


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