珈琲、それは、
悪魔のように黒く、地獄のように熱く、
天使のように清らかで、恋のように甘い。
この有名なアフォリズムは、フランスの政治家タレーランこと、
シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール伯爵の言葉です。
翻訳者によって、引用されるメディアによって、
様々なバリエーションがあります。
私がこの言葉を知ったのは中学生のころ。
引用していたのはインスタントコーヒーのCMでした。
ところが、私はずっと長い間、
フランスの文豪、バルザックの言葉だと思い込んでいたのです。
バルザックはタレーランより半世紀近く後に生まれた作家ですが、
真夜中、珈琲をがぶ飲みして原稿を書いていたことでも知られています。
だから…というわけでもないのでしょうが、不思議な勘違いですね。
ちなみに、バルザックについては、
こちらのブログが参考になります。
『人物再登場がおもしろいバルザック』
さて、世紀を超えて語り継がれるタレーランの言葉。
とても文学的な詩情あふれる表現ですが、
ヨーロッパ上流階級の社交辞令は、
本邦中世における平安貴族の短歌みたいなもの(?)
名門貴族の出身であるタレーランにしてみれば、
ごく自然に身に付いた教養の発露だったのでしょう。
実際は、裏切りと機略の政治家で、稀代の天才外交官、
一筋縄ではいかない人物でした。
タレーランの人生は波乱万丈。
関わる人物もローマ教皇ピウス6世をはじめ、
ナポレオン、メッテルニヒなど大看板ぞろい、
とても興味深い生涯を送った人です。
主な伝記のなかでは、第78代総理大臣・宮沢喜一の弟・泰が訳した
ジャン・オリユー『タレラン伝』がベストですが、
これは大著で高価。少し覚悟が必要かもしれません。
そうなると、文庫で手軽に読めるダフ・クーパー『タレイラン評伝』
と思ったら、いつのまにか品切れでプレミアムが付いていますね。
特に下巻。
そのうちきっと、
ピノキオブックスで手頃な価格で出るでしょう(?)。
書庫にはありますが、まだ「売れない本」なのです。
【追記】3月24日、入荷しました。詳細はこちら。
Let's Have a Coffee Break.
0 件のコメント:
コメントを投稿